菊切手 (「日専」を読み解くシリーズ)

最初に額面揃いをすすめて、次に各額面１リーフを目安に集めるようにと、菊切手をあまり持っていない収集家が段階を踏んでハマっていくようにうまく作ってあります。収集が進んだ人は最初は飛ばしてもいいようにできています。しかし額面別の詳細になると急にシビアな鬼軍曹となって叱咤してくるのが面白いです。5厘の帯封の使用例は中身つきで感性にピンとくるものは絶対入手とか、20銭が自然に多く集まる人は消印に興味がある、などと言い当てるなど、額面ごとに決まったことをズラズラ書くのではなく、それぞれに工夫した表現を使って活気があります。特に色調の部分はカラーでないモノクロの本を補う親切な記述があり、たいへん参考になりました。ときどき気合いが乗りすぎて「力技で攻めるもよし、早業を効かせるもよし」といった意味不明な文章も出てきますが雰囲気は伝わります。とても面白い本で他のシリーズの収集家も参考になるところが必ずあるでしょう。ひとつ誤植と思えるのは巻末の初期使用一覧で２銭の単線目打12.5の最初期使用が明治38年とあるところです。本文の記述と一致しないのです。