【期間限定 ダウンロード特典付き】ボルカー回顧録 健全な金融、良き政府を求めて

日本語でいう「公僕」の字面そのままに、著者の90年余りの人生は其の殆どを、公共への奉仕という形で体現し続けたという事が随所から伝わってきます。惜しむらくは、著者が逝去した2019年12月8日以前に読み終えられなかった事でしょうか。FRB議長としてのインフレーションとの闘い、バラク・オバマ政権下でのドッド・フランク法ボルカー・ルールの制定といった有名なエピソードは、『伝説のFRB議長ボルカー』でも語られていますが、ニューヨーク連銀でのジュニア・エコノミスト時代やFRB議長退任後のエピソードの数数も語られているのが本書ならではだと。直接的では無いにせよ、バーゼル自己資本規制や国際会計基準IFRSまでも関連があったのは驚きです。著者を語る上で最も優れていると考える点は2つ。1つは前述の通り生涯に亘り公僕であり続けた事。もう1つは、理論に傾倒し過ぎる事なく、実務の観点を確りと主軸に据えていた事。後者の観点で、FRB議長就任当初のベン・バーナンキや1期で終わったジャネット・イエレンとは対照的に映ります。実態経済に対し、経済学の理論やモデルで記述出来るのはほんの僅かに過ぎず、其はAI技術や機械学習が如何に進展しようとも普遍的な教訓として残存する事でしょう。TEDのスピーチに於いて、サイモン・シネックが「ガンジーやマザー・テレサが数億ドル(数百億円)のボーナスを受け取ったとしても、反発は少ないでしょう」というような事を述べていました。ポール・A・ボルカー然りといったところでしょうか。尤も、当人は受け取りを辞退するでしょうが。ボルカー亡き後も、至るところに破滅の足音は響き始めており、金融危機を未然に防ぎきる事は難しいでしょう。凡人が出来る事には限りが有りますが、ボルカーが本書で示した警鐘を十戒に。